特殊清掃費用は誰が負担するのか?そして原状回復の責任の範囲
2023/04/01
それぞれの立場で共通しているのはいかに自身の持ち出しを少なくするか?
かなり下世話なお話しですが実体験を交えてお知らせしようと思います。
孤独死などが起きた場合に特殊清掃費用は誰が払うのか?という問題が持ち上がります、普通のハウスクリーニングやお片付けの場合は当然本人なのですが当然その本人は亡くなっているのですから支払うことはできません、ですから本人に代わる人がその支払義務を負うことになります。
☆特殊清掃から原状回復までにかかる費用の目安
☆本記事は株式会社まごのて代表取締役 佐々木久史が取材監修執筆を行いました
賃貸明渡と清掃の責任は誰にあるのか
賃貸住宅と持ち家の場合だと若干違うのですがここでは賃貸住宅の場合でご説明します。
特殊清掃も遺品整理も遺族がやるのでは?と考える方が多いのですが法的には必ずしもご遺族というわけではありません、賃貸の場合の特殊清掃や部屋の明渡に関する優先度の高い順番は以下です。
1.連帯保証人
2.法定相続人
3.物件オーナー
(1)は賃貸住宅を借りる場合ほぼ必ず連帯保証人を1名または2名付けることを求められます、『連帯』と名がついてますのでほぼ本人と同じだけの責任を負います、ですから優先順位1番は連帯保証人となります。
昨今は保証会社がその役割を担うことが多いですがその場合も同様です、場合によっては保証会社に加入させつつ人的保証人を求める場合もありますがこれは保証会社だけではカバーしきれない事案があった場合を想定して二重に保証を付けている場合もあります。
私たちが遭遇する多いパターンとしては家財撤去は保証会社、特殊清掃は連帯保証人もしくは相続人というものです。
(2)の法定相続人ですが人が亡くなると相続というものが発生します、これは亡くなった方の財産などを引継ぐ人のことを指しますが相続する立場で割合が変わってきますし特殊清掃などはマイナス財産(負債)ですから相続放棄という手続きで特殊清掃などの義務を放棄することもできます。
(1)もなく居たとしても資力がない場合は(2)が行うことになりますがそれも相続放棄やそもそも相続人がいないという場合もあります、そのような場合は(3)の物件オーナー自らが行うしかありません。
ですがそう簡単なものではなく大家さんの判断で行うことができないことがあります、それは家財道具の撤去です、次の章で詳しく解説します。

もし連帯保証人も遺族もいない場合
大家さんは自分の持ち物である部屋を貸しています、そしてそこから毎月家賃をもらい生活の糧としています。
その賃借人が亡くなった場合通常の手続きであれば上記の(1)(2)で終わるのですが必ずしもそうではないシーンがあります、(1)もお金がない(2)は相続放棄やそもそも存在しない、となれば大家さんがやるしかないのですが事はそう単純ではありません。
早い段階で家財の所有権を放棄する旨の意思表示をしていれば問題ありませんがその確認がない時点で大家さんが家財を撤去することは認められていません、私たちが遭遇した1つの事例ですがこのようなものがありました。
東京都内のマンションで孤独死が起き連帯保証人はいるが資力がない、そこで相続人である子どもさんが現れたのですがいつまで経っても家財を出してくれない(部屋を明け渡さない)家賃も払ってくれないと大家さんにとっては最悪の展開です。
しびれを切らした大家さんは私たちに家財を出す依頼をしたのですが相続人の意思がはっきりしていないことが発覚したのです。
本来であれば賃貸の部屋を借りて住むという権利も相続人に移転していますから当然家賃も払わなければいけません、実際住んでいなくとも部屋を明け渡していない(つまり賃貸契約継続中)のですからいくら大家さんが気の毒であっても大家さん権限で荷物を出すことはできないのです。
正式な手続きとしては裁判所に明渡の訴訟を提起して判決をもらった後にしか家財撤去はできないのです、これを自力救済の禁止と言います。
では保証人もいない相続人もまったくいない場合ならすぐに着手できるのかと言えばそうでもなく相続財産管理人を裁判所に請求し管財人の指示の元行わなければいけません、いずれにしてもひじょうに時間と労力がかかるとても面倒な事態になってしまうのです。
ですので入居時にあらかじめもしもの時は家財を放棄する旨の覚書を交わしておくとか、もしもの場合は家財の撤去を大家さんに委ねるという内容の書面をもらっておくと良いでしょう。
特殊清掃から原状回復までの責任の範囲
では最後に(1)(2)の関係者が特殊清掃や家財撤去などの原状回復をどこまでやるのか?という点です。
たとえ孤独死であってもそれは普通の退去と同じように扱われます、民法621条『賃借人は、原則、賃貸物の原状回復義務を負う』『ただし、通常損耗・賃借人の帰責性のない損傷については負わない』にしたがって行えばいいわけで何も特別なことはありません。
ただ実際問題として孤独死が起きてるわけですから普通の退去に比べるとひと手間かかります、それが特殊清掃の部分であると考えていいです、遺体痕などの汚れを除去しにおいを完全に取り去り家財をすべて出して返せばOKです。
ここでよく問題になるのはリフォーム(内装を新調)までして返せと求められる場合がありますが上記法律の条文には賃借人の帰責性のない損傷については負わないとあります。
当然孤独死(病死)は故意でも過失でもありませんので善管注意義務違反での追及はできません、ただし判例ではご遺体が長期間放置されたことによる損耗は過失があったという判断も下されていることから場合によっては内装の新調もあり得ます。
ただ新たな内装というのは次の賃借人のための物ですから満額を請求することは現実的には難しいのです。
私たちの考え方としては完璧な特殊清掃を行いにおいも完全になくなった状態であればこのような争いは起きないと考えています。
また孤独死が起きたことによる物件価格の下落や価値の減少について損害賠償を求めるものもありますが判例で認められた例はありません、ただしこれは孤独死に関するものであって自殺は別です、これは意志をもって決行していますので故意であり過失と判断され原状回復は当然のこと損害賠償まで認められています。
マンション孤独死|大家さんとの費用負担で紛争
都内のマンションでの特殊清掃で費用負担と施工範囲の問題で紛争が起きました、ことの経緯をまとめると以下の通りです。
1.兄弟が孤独死し特殊清掃と遺品整理をご遺族が私たちに発注。
2.施工途中で大家さんがリフォームの件で私たちに相談。
3.特殊清掃が終わったらリフォームに入ってほしいと私たちに発注。
ここまでが発注の流れで特殊清掃作業中に大家さんや管理会社からリフォームまでやってほしいというパターンはよくあります、当然私たちの認識としては大家さん側から新規に依頼を請けたという認識になります。
消臭作業も無事終わり、私たちとご遺族の間では料金の精算も終わりこの時点で消臭も完了したと大家さんに報告、そしてそのままリフォーム作業に入りおよそ10日後に完了したので現地で大家さんに説明しながら引渡し、そして同時に請求書を渡した際にこう言い放ったのです。「〇〇さん(ご遺族)からもらってください」
私たちの知らないうちにご遺族との間で話がついてたのかも知れないと一応確認するも一切聞いていないということで紛争が勃発しました。
まず上記の流れを見てもわかるようにリフォームは特殊清からの一連の流れで行われてはいるが大家さん側から相談があり発注されたのは明白で、事実見積書や発注書は大家さん側から出ていました。
大家さんには最初からリフォーム費用を払うという認識はなく、部屋の内装や仕様は大家でないとわからないからと思い口を出しただけと言います、私たちからも特殊清掃が終わった時点で一度引渡してることを説明しますがまったく埒があきません、とうとう大家さん側の管理会社まで登場し事態は膠着しました。
私のところとしても支払いを受けることができないのはひじょうに困るので、顧問弁護士主導の元物件の引渡しを行わず留置権を行使し弁護士が窓口となって交渉にあたりましたが、上記の責任の範囲を示し理解を得られたのでお支払となりましたが、どうやらこの大家さんは最初は当然自分が払うものと思っていたそうですが、誰かに変な情報を吹き込まれ言ってみて通れば儲けもの程度と考えていたようです。
専門家が在籍する特殊清掃会社
特に特殊清掃の関係では費用負担を巡ってトラブルが起きやすいです、株式会社まごのては代表者が宅建士、行政書士ですし外部顧問に弁護士もおり法的観点からのアドバイスも可能です。
今までも大家さん、ご遺族の双方に入り法に則ったアドバイスや意見書を交付し円満に解決できるように何件もしてきた実績があります。
特殊清掃の技術はもちろんこのような付随する部分までトータルにカバーできる業者はそう多くありません、東京近辺で特殊清掃業者をお探しならまずはまごのてへご相談ください。