特殊清掃|孤独死したのは身寄りのない生活保護受給者
2023/04/20
☆本記事は株式会社まごのて代表取締役佐々木久史(宅地建物取引士)が監修執筆しました
結論から言えば亡くなった方が生活保護受給者だったというだけで相続等の運用は通常通りまったく同じです、つまり特殊清掃等の原状回復義務者は連帯保証人や法定相続人です。
行政(生活保護の係)は負担してくれないのか?何か特別な制度はないのかとの質問も多いことから実例に基づいて解説いたします。
☆特殊清掃は誰が行うのか?費用負担はどこまで?
生活保護受給者が孤独死した場合
部屋で亡くなり生活保護課からの一報で特殊清掃に着手。
地域:東京23区 1Kアパート 孤独死の特殊清掃(生活保護受給者)依頼者:某区役所
(作業者コメント)
以前ゴミ屋敷を片付けたことがあるお宅の特殊清掃と家財の撤去を行いました、会社から渡された指示書の住所を見た時に以前作業をしたことがあるアパートではと思ったのです、調べてみると約1年前にゴミ屋敷片付けで生活保護課からの依頼で片付けたことがある部屋でした、それなりのゴミ屋敷状態で住んでいたのは高齢男性であったと記憶してます。
現場となったアパートに入室すると、すぐにハエの大群が私目掛けて飛んできました、その様子からも相当日数が経過しているようです。
遺体痕があった場所の布団をめくると大量のウジが発生しており、思いがけない侵入者に驚いたのか四方八方に逃げました。
この逃げるウジを早い段階で駆除しないと隙間から隣や階下に行ってしまい、数日後に大量のハエが別の部屋に湧いてしまうことになります、この現場は死後およそ3週間と長く、話によるとお隣の部屋にウジが出たことと異臭から管理会社に通報があり警察立会いの元開錠し発見されたらしいです。
この孤独死現場の場合は、遺体から出た体液の量が多く床下も広く浸透していましたのでかなり大規模に床板を剥がし防臭処理を行いました、着手から完全消臭までおよそ3週間を費やした現場でした。
特殊清掃オペレーションスタッフのコメント
この特殊清掃現場は以前ゴミ屋敷を片付けたこともあり第一報は区役所の生活保護課からでした。
状況をお聞きした後、作業手配は早急に行いましたが同時に支払元の確認も行いました。
生活保護者が孤独死した場合の特殊清掃費用は行政からでません、生活保護は健康で文化的な生活をおくるため、と定義されてるので(生活ですので生きてることが大前提)亡くなれば即廃止となるのです。
今回の場合は、アパートのオーナーさんが全部出すということでした。
特殊清掃の場合、依頼者が身内だけとは限らず多岐にわたるため、支払い元を早々に確定させておくことはひじょうに大事なことです。
以前、支払元の確認を怠ったためそれを確定するのにひじょうに時間が掛かったことがあります、とりあえず早く!ということは性質上よく理解できるのですが、ボランティアではない以上優先事項でもあるのです。

生活保護受給者宅の清掃費用は誰が出す?
弊社では2022年5月6月の2か月間で生活保護受給者宅の孤独死案件は22件取り扱いました、そして実際の特殊清掃費用の負担者は以下の通りでした。
・アパートやマンションの物件オーナー11件
・火災保険の特約を適用(孤独死保険)9件
・家賃保証会社 3件
・ご遺族(相続人) 1件
近年は孤独死に対する火災保険の特約が認知されつつあり保険の適用案件も増加してきました、これは1部屋あたり数百円/月追加するだけで、特殊清掃費用や家財撤去費用、数カ月の家賃保証が受けられるものまであります。
家賃保証会社ですが、このほとんどは家財撤去までは対応しますが特殊清掃部分は対応できないことがほとんどです、弊社で扱った案件も特殊清掃費用は出ないということであったが、家財撤去費用一式として施工したものです。
極めて少ないですがご遺族や連帯保証人が支払うという例もゼロではありませんが保険も入ってない、保証会社も入れてないということであればやはり物件オーナーが負担する必要があります、また物件オーナー負担の11件中4件は家賃保証会社が家財撤去を行った後、特殊清掃部分をオーナー負担で依頼されたものです。
かなり以前にホームレスの自立を促す政策として、客付けが難しいアパートに住まわせるというものがありました、その方たちもそれなりの年齢になり孤独死のリスクが高まっています。
元ホームレスですから遺族が簡単に見つかるわけもありません、こんなときのためにやはり物件オーナーは保険に入っておくのが一番良い選択ではないでしょうか。
故人に法定相続人がいない場合家財は誰の物?
孤独死があった部屋を清掃し原状回復する義務は普通退去と同じくその責任は本人にあります、ですが当事者である本人は亡くなっているのですから実行することはできません、ですから連帯保証人や相続人となるのですがそれらが全くない場合はどうなるのか?という問題があります。
まず一番の問題となるのが家財です、原則として個人の私的財産は相続人が引き継ぐことになります、これは形ある家財やお金だけではなく賃借権すなわちそのアパートやマンションを借りて住む権利も引継がれます。
ですから厳密に言えば相続人の意思決定がなされていない場合は何も着手できないのです。
では相続人がいない場合はどうするのか?ですが相続人がいないと確定するには相当の日数を要します、まず役所が戸籍調査しそれでも判明しない場合は裁判所に申し出て裁判所が公示をします、だいたい1回目の公示後に財産を処分する財団が組織され選任された者が管財人(だいたいは弁護士がその任務に就きます)として再度財産調査をしさらに公示を2回程度行った上で相続人なしと判定され財産の換価が行われ国庫に納入されるという流れです。
実際にこの流れを行えば1年どころか事案によっては2~3年かかります、その間何も手を付けてはいけないのが正式な運用です、その観点でいえば保証会社や連帯保証人は原状回復義務はあるが家財の処分はできないということになりますが本人(契約者)がもしもの時は家財等の処分を一任する旨の一文が契約時に付されているので保証会社権限で処分出来るのです。
この制度は賃借人がもしもの時に家財の所有権を放棄する旨をあらかじめ表明しその処分権者を指名しておけるという制度で2021年に明文化されました。
ですので高齢入居者が多い賃貸物件オーナーや相続人探しに難航しそうな入居者を入れる場合はこのようにあらかじめ自分自身(大家さん)に処分権を付与する旨を表明しておく方が良いでしょう。
株式会社まごのてではこのように特殊清掃や原状回復にまつわる法的な見解を示せるプロが在籍しており物件運営者や管理者に的確なアドバイスができる体制を整えていたすので安心してご相談ください。
☆法律監修は栃木柳沢樋口法律事務所、弁護士栃木義弘先生が行いました。
☆関連記事:生活保護受給者宅のゴミ屋敷片付けについて|行政担当者必見
ゴミ屋敷と生活保護そして自殺の関係
私たちはゴミ屋敷片付けも事業の柱として行ってます、その中には生活保護受給者もいます。
本人からの相談の場合もあればケースワーカーの場合もある、生活保護だから部屋が荒れるということはありません。
孤独死で発見された生活保護屋の部屋の場合、感覚的には半々というところです、極端にモノも少なく整理整頓が行き届いてることもあるしその真逆でモノは多いわゴミだらけだわという場合もある。
あるアパートオーナーさんの話だと『生活保護者は部屋をキレイに使わないから入れたくない』というのを聞いたことありますが、たぶんゴミ部屋にするという意味だと思いますが、こんなの一般の人も一緒です。
自殺者の部屋は荒れているは本当か?
自殺者の部屋は汚いとか荒れているというハナシはよく聞きますが実際にどうなんでしょうか?
結果から言いますと自殺者だけに限って言えば五分五分です、いわゆるゴミ部屋状態のこともあれば逆に完全に身辺整理をしたのではと思うぐらいキレイなこともある。
孤独死の場合はどうなのか?これは微妙なとこですが若干荒れ気味のところが多いです、孤独死=孤立化という図式は好きではありませんがこのサイトにも書いてるように。
【孤独死する可能性が高い前兆】
・ご近所さんとあいさつをしない
・地域コミュニティに属していない
・趣味を共有できる仲間がいない
・布団をたたまずに敷きっぱなしにしている
・家電が壊れても処分しない。同じ家電を複数個持っている
・ゴミを捨てない、掃除をしない
・食生活が乱れ、室内にはコンビニ弁当の空き箱、お酒の空き瓶が散乱している
・ゴミ屋敷化している
特に後半の5つはまさにゴミ部屋住人の行動パターンです、部屋が荒れることと孤独死や自殺の因果関係は正直わかりませんがある記者の方の話によると富士の樹海で見つかった自殺者で身元がわかり家まで判明した人の7~8割がゴミ屋敷化していたということです。
部屋は心の写し鏡とも言いますから精神的に追い詰められ苦しい時ほど片付けてみる、掃除してみるというのは意外といい方法なのかもしれません。
東京都電子調達加入事業者
株式会社まごのては東京都の電子調達システムに加入しています、これは土木建築の公共工事入札参加資格のようなもので年に一回かなり厳正な審査を受けて加入できるものです、これにより公共入札も可能ですが各行政区から随意契約の事案も多数請けています、特にゴミ屋敷関係が多いのですがこれもひとえに信用と実績そして電子入札加入がその裏付けとなってるのは言うまでもありません。
東京都電子調達の加入に際しては決算書はもちろん納税状況や会社の運営状況や代表者や役員の欠格事由に至るまでかなり細かく精査されて与えられるものですから加入していることそのものが信頼なのです。
特殊清掃業者をお探しの方、このようなお墨付きをもらってる業者はそう多くありません、東京近辺で特殊清掃業者をお探しならまごのてへご相談ください。